PKU(高フェニルアラニン血症の一部を含む)の勧告治療指針の改定
平成24年、PKUの勧告治療指針が下記のとおり改定されました。
表A 血中Phe値の維持範囲
乳児期~幼児期前半 | 2~4mg/dl (120~240μmol/L) |
幼児期後半~小学生前半 | 2~6mg/dl (120~360μmol/L) |
小学生後半 | 2~8mg/dl (120~480μmol/L) |
中学生 | 2~10mg/dl (120~600μmol/L) |
表B 各年齢別Phe摂取量の目安
年齢 | 摂取Phe量(mg/kg/日) | |
0~3ヶ月 | 70~50 | 註:PKUではない3か月乳児で、一日のたんぱく質摂取目安量を15g/日とすると、それに含まれるPheは約750mgとなり、体重を6kgとするとPhe摂取量は125mg/kg/日となる。PKU児ではこれを70~50mg/kgまで制限する必要がある。 |
3~6ヶ月 | 60~40 | |
6~12ヶ月 | 50~30 | |
1~2歳 | 40~20 | |
2~3歳 | 35~20 | |
3歳以後 | 35~15 |
表C 治療乳摂取量の目安(g/日)
乳児期 | 60~100 |
幼児期前半(1~2歳) | 100~120 |
幼児期後半(3~5歳) | 120~150 |
学童期前半(6~9歳) | 150~200 |
学童期後半及びそれ以降 | 200~250 |
表D Phe除去ミルク配合散及び低Phe治療食品の組成
組成(100g中) | Phe除去ミルク配合散(雪印) | 低Pheペプチド粉末(MP-11、森永) | Phe無添加総合アミノ酸粉末(A-1、雪印) |
たんぱく質(g) | 15.8 | 75.0 | 93.7 |
脂質(g) | 17.1 | 0 | 0 |
炭水化物(g) | 60.4 | 7.2 | 0 |
エネルギー(kcal) | 458 | 329 | 375 |
Phe(mg) | 0 | 280 | 0 |
チロシン(mg) | 1,569 | 4,720 | 9,300 |
PKU(高フェニルアラニン血症の一部を含む)の勧告治療指針(平成7年改定)
- 新生児マス・スクリーニングで高フェニルアラニン血症が見出された新生児については、ビオプテリン代謝異常の有無を確かめて、これが否定され、正常のタンパク摂取量(2~3g/kg/日)で血中Phe値が10mg/dlを超えているときは、生後20日までに食事療法を開始する。なお、10mg/dl未満のときは、数日間経過を観察して7mg/dl以上の値が続くときに食事療法を開始する。
- 新生児ではPhe投与量を適切に制限して、数日のうちに血中Phe値が10mg/dl以下になるように治療する。そして血中Pheが2~4mg/dlまで低下するようにPhe投与量を調節する。Pheの忍容能は症例により異なるので、血中Phe値を連日測定しながらPheの投与量を決定する。このような初期治療は入院して行うことが必要である。
- 血中Phe値の維持範囲は表Aとする。
- Pheの忍容能は症例により異なるが、各年齢におけるPhe摂取量の目安は表Bのようである。治療開始後1ヶ月以後も乳児期は週1回程度、幼児期は月1~2回程度血中Phe値を測定して、Phe摂取量を調節する。濾紙に採取した血液のPhe値はGuthrie法またはHPLC法で、血清Phe値はアミノ酸分析計で測定する。
- 1日の摂取エネルギー量は、同年齢の健康小児と等しくする。タンパク質の配分比が健康小児よりも多少低いため、糖質を十分に与えてエネルギー不足とならないようにする。
- タンパク質(窒素源)の摂取量は、乳児期には2g/kg/日、幼児期は1.5~1.8g/kg/日、学童期以降は1.0~1.2g/kg/日以下にならないようにする(タンパク摂取量が0.5g/kg/日以下になると、Phe摂取制限をしても血清Phe値が上昇することがあるので注意を要する)。タンパク質すなわち窒素源の大部分はPhe量を減らした治療用ミルクから摂取し、表Aの血中Phe値の維持範囲に保つことができる範囲でPheを自然タンパクとして与える。なお、ミルクの投与量の目安は次のとおりである。乳児期:60~150g/日、幼児期:150~200g/日、学童期以降:200~300g/日。
- 小学校入学までは原則として4週ごとに来院させ、血中Phe値を測定するとともに身体計測を行う。3ヶ月ごとに血液一般検査、血液生化学検査を行う。定期的に知能発達検査(3歳までは津守・稲毛式などの発達指数の検査、3歳以後は知能指数の検査)を行う。また、適宜脳波検査と能の画像検査を行うことが望ましい。
- これまで述べてきた食事療法は、少なくとも成人になるまで継続すべきであり、できれば一生続けていくことが望ましい。
表A 血中Phe値の維持範囲
乳児期~幼児期前半 | 2~4mg/dl |
幼児期後半~小学生前半 | 3~6mg/dl |
小学生後半 | 3~8mg/dl |
中学生 | 3~10mg/dl |
それ以後 | 3~15mg/dl |
表B 年齢別Phe摂取量のおよその目安
年齢 | 摂取Phe量(mg/kg/日) |
0~3ヶ月 | 70~50 |
3~6ヶ月 | 60~40 |
6~12ヶ月 | 50~30 |
1~2歳 | 40~20 |
2~3歳 | 35~20 |
3歳以後 | 35~15 |
総合母子保健センター特殊ミルク事務局発行の食事療法ガイドッブック